僕は、目を覚ました。
抱きついていた草の根元から下りる。
そして、辺りを見回した。
右の方には、川が流れていた。
その流れの先には、堤防があり、
さらに先を見渡すと、大海原があった。
水平線上には太陽が昇り始めていた。
前方を眺めると、コケや草木が生い茂り、
左の方に顔を向けると、
20mぐらいの高さの大木が、天に向かって生えていた。
ここは…、
故郷の草地…ではない。
ハラヒシバッタの村だ。
どうやら…僕は夢を見ていたようだ。
故郷の草地で、友達のバッタたちと跳ねあって遊んだ日の夢を…。
彼女たち、レイちゃんとイナコちゃんとは、
よく飛び跳ねたり、鬼ごっこをしたりして遊んだ。
さっき見た夢は…、
僕が川に流された日の前日に、彼女たちと遊んだ時のことだ。
あの後、何度も草の上で、うまく鬼ごっこをしようとしたんだけど、
どうにもちゃんと出来ず、よく地面に落ちたことが思い出されるよ。
今度、鬼ごっこをする時は、もっとうまくやりたいところだ。
…そうか、ここはハラヒシバッタの村だった。
彼女たちのいる草地ではないのだ。
また鬼ごっこをしようと思ったら、危険な道を飛び跳ねていく必要がある…。
ぐぅ…。
僕のお腹が鳴いた。
そういえば、まだ朝食を食べていなかった。
とりあえず考えるのは後にして草を食べよう。
僕は目の前に生えている草に近づき、
かじり始めた。
ガジ、ガジ。
ムシャ、ムシャ、ムシャ。