茎をつたい、てっぺんまでのぼった。
ガジ。
葉をかじりながら…思う。
良い…景色だと。
この草から数m先を流れる川が、沈む夕日を受けてキラキラと輝いていた。
その川が流れてくる先には、人が造った橋が見えた。
その上を自転車が駆けていく。
あの自転車という乗り物は怖いものだ。
大きくて、重たくて、速い。
自転車だけではない。
人という種族が使う道具は、ショウリョウバッタである僕には、かなりスケールが違うと感じる。
気を付けないと危ないな。
この河川敷からは、出ないよう注意しよう。
…日が沈んだ。
ヒュー。
良い風が吹いている。
暖かな春の風だ。
今日は、気持ち良く眠れそうだ。
ヒュー!
ヒュゥゥゥー!
…と思ったけど、ちょっと風が強め…。
飛ばされないよう、気を付けて寝よう。
僕は葉を強く抱きしめ、 眠った。