故郷の草を求めて第34話…フナ、追撃…14

視線を外さず、じっと僕をにらんでいた。


ガクガク。


僕は、そのプレッシャーに体を震わせた。


なぜ、こちらに泳ぐのを止めたのだろうか。


後、少しの距離だったのだ。


確実に頭突きが飛んで来ると…思っていた。


フナが…、


水面ギリギリまで上がってくる！


「ちっ。


ぬかったぜ。


時間をかけすぎてしまった。


川の下流にまで、来てしまった。


ここは河口。


川と海のはざま。


潮が…混じってきやがったのさ。


俺は真水を生息域とする淡水魚。


海のしょっぱさは苦手でね。


これ以上、追うのは御免なのさ。


ショウリョウバッタ。


よくぞ、俺から逃げ切った。


誉めてやるよ。


ちくしょう！」


フナはそう言うと、


反転し、上流へと泳ぎ去った。