「セイよ。
この草地から、出てはいかんぞ」
トノサマバッタの長老、デーンが言った。
「どうして?」
僕は首を傾げ、聞いた。
「危険がたくさんあるからじゃよ。
この草地は、良い。
バッタが多く集まっている。
屈強なバッタが、たくさんいるのだ。
彼らが見回りをして、草地を外敵から守っている。
しかし、外は、そうではない。
他の種族の生き物が、わんさかとおるのだ。
その中には、わしらを襲う、凶暴な種族が数多くいる。
大人のバッタが、数匹がかりで、かからなければ、
太刀打ち出来ない、強力な連中だ。
決して、外に出てはいかんぞ。
分かったな、セイよ」
デーンが厳しい表情で僕に言った。
「分かった。
気を付けるよ」
僕は、うなずいた。
うなずいたところで、
ピカーン。
視界が開けた。
太陽の光が、僕の目に飛び込んでくる。
僕は…、
寝ていたのか。
夢だった…か。
ここは…、
そうだ、河口だ。
川に流され、ここに辿り着いたのだ。
デーン。
大変なことになってしまった。
出てはいけないと言われていた草地の外に、
出てしまったよ。
かなりヤバいよ。
とてつもなく危険であることが分かる。
出て、すぐに、フナに襲われてしまったのだ。
草地にいた時も、
少し外の様子を見ようとしたり、
遊んでいて誤って外に出てしまったら、
途端に、カマキリや、クモなどの危険生物に遭遇してしまった。
今、僕は、それほどまでに危険がいっぱいな、草地の外にいる…。
元の草地に戻るには、多くの距離を移動しないといけない。
多くの危険に遭遇することになる。
かなり戻るのが困難だよ。
困ったよ。