ビシャ、ビシャ!
僕は、木の枝に向け、泳ぎ始めた。
「待てや!」
その僕の後を、フナが追う。
ビシャ、ビシャ!
少し進み、木の枝までは、残り40cm程になった。
すぐ到達出来る距離だ。
間に合うはず―
ピィィィン。
僕の触角が…、
感じている。
ヤバいと、感じている。
フナの泳ぐ速度が速い!
僕はまだ枝まで、半分の距離も泳げていない。
それなのに、フナは僕との距離を、半分近く縮めている。
双方の距離が、急速に縮まっている。
このままでは逃げ切れない!
もっと急げ、僕!
ビシャ!
ビシャ!
水面を強く蹴って泳ぐ。
さっきより、加速した。
この泳ぎを繰り返せば!
「逃がしてたまるか!
俺のひれの全力を甘く見るなよ!」