僕のことを襲う気、満々だ!
このままではヤバいよ!
フナは泳ぎが、とてつもなく上手なのだ。
水中のプロフェッショナルなのだ。
何度か草の上から、フナの動きを見たことがある。
川上から現れたと思ったら、あっという間に川下の方へ消えてしまった。
鳥のくちばしを優雅なターンでかわしていた。
恐ろしくも華麗に、ひれを動かすことが出来るのだ。
水上で動くのが不得意なショウリョウバッタの僕では、
逃げ切るのは、かなり厳しいよ。
どうしよう…。
…見逃してもらえるよう、説得してみるか。
うまく伝えることが出来れば、あきらめてくれるかもしれない。
僕は、フナの方を向き、口を開いた。
「フナさん。
お願いがあります。
見逃して、もらえないでしょうか?
元いた草地に戻りたいのです。
周りを見て下さい。
水草にあふれています。
それは、フナさんの好みな食べ物のはず。
それで、あなたのお腹を満たしては、もらえないでしょうか?
植物は再生可能なのです。
再び、葉を伸ばすことが出来るのです。
あなたの優しさで、僕を見逃して下さい」