…くっ。
困ったよ!
僕はやるせない気持ちが高まり、思わず、
ピョン!
コンクリートの階段に横から飛びついた。
そして、がむしゃらに、のぼる。
のぼり切り、故郷の草地がある方向を見た。
遠すぎて、かすんでいた。
やっぱり、凄い遠いよ。
戻れない感じだよ。
どうすれば、良いんだ、僕は。
そう途方に暮れた時、
ぐぅ…。
お腹が鳴った。
そういえば、周りを見てみると、朝にしては明るい。
太陽が大分、高い位置にあるようだ。
もう昼前かもしれない。
限界まで体を動かして疲れたため、長く眠ってしまったようだ。
とりあえず、食事をしよう。
僕は階段から跳んで下り、
目の前の草を、
ガジ、ガジ。
かじり始めた。
かじりながら、
思い出す。
故郷のバッタ達のことを。
ショウリョウバッタのレイちゃんと、イナゴのイナコちゃんのことを。
彼らとは、今日、跳ねあって遊ぶ約束をしていた。
今頃、どうしているだろうか。
約束を破った僕のことを怒っているだろうか。
僕がいなくなったことに気付き、心配しているだろうか。
…困った奴、だよ、
僕は。
昨晩、風が吹いて、僕がつかまっていた葉が飛んだ時、
早く反応して地面に降りれば、
約束を破らずに、すんだ。
困らせずに…すんだ。
困って途方に暮れている場合では…ないよ。
なんとか頑張って戻らないと。
しっかりと草を食べて、体力を完璧にし、行く!
ガジ、ガジ。
ムシャ、ムシャ、ムシャ。