僕は階段に横から飛びつき、のぼった。
のぼり切り、見渡す。
この堤防が、50m程先まで続いていた。
その先に、林、河川敷、遊歩道などが見えた。
僕の故郷の草地近くにあった橋も、かすんで見えた。
遠いが、
目的地は、目に見える範囲にある。
辿り着けるよ。
ピョン。
僕は前に跳んで、
階段から下り、
堤防を歩き始めた。
黙々と歩を進めた。
休まず、ずっと歩き続け…、
30mほど進んだ。
ふぅ。
やはり、時間がかかる感じだよ。
故郷の草地から河口まで下るのは、ほんの少しの時間だったのに。
川の急流が、僕を運んだのだ。
1時間に満たなかったと思う。
川の流れる速度と、僕の歩く速度は、圧倒的な差があるよ。
でも、確かに進んでいる。
進んでいる限り、目的地との距離は縮まっていくのだ。
あと少しで、堤防の端。
距離があったが、ちゃんと端まで辿り着けそうだ。
こんな感じで、どんどん歩を進めていくぞ。
思っていた以上に簡単に、
故郷の草地に到着出来てしまうかもしれないよ。
そう思った時、
ピィィィィィン。
僕の触角が、前方、階段の陰に、
何かが潜んでいるのを感じ取った。