「数日前、近くを通った時は、ちゃんと葉があったのに…」
ラーナが葉を失った草を涙目で見てつぶやいた。
「どうして、薬草がこんなことに…」
シイが言って、周囲に生える薬草を見回す。
僕も見回す。
そして、首をひねる。
なぜ…、
ここまで薬草の葉が消失してしまったのだろう。
この一帯に生えている薬草全体がそうなってしまっているのだ。
かなり不思議な感じだ…よ。
そう思っていると、
「おはよう。
3匹とも」
後ろから声がかかった。
振り向くと、
村長のゲンの姿が。
『村長!』
ラーナとシイが同時に言って、ゲンに向かって跳ねた。
ゲンの少し前に着地し、
シイが、
「村長、大変です!
薬草の葉が、消えてしまったんです。
あんなにたくさん生えていたのに」
早口で薬草のことを伝えた。
そのシイの言葉に、
ゲンが、
「薬草…か。
ひどい有様だよ」
顔を曇らせて言った。
そのゲンに、シイが詰め寄り、
「村長は、薬草のことをご存じなのですか」
聞いた。
ゲンが重々しく、うなずき、口を開く。
「ああ…。
実は、昨日…、
村のみんなが、食べてしまったんだ。
一昨日の夜、風が強かった。
あまりに風が激しかったから、
村のバッタの多くが吹き飛ばされ、
地面や木にぶつかって、
ケガをしてしまった。
それで、ケガに効く、あの薬草が、
みんな、必要になってしまって…」