シイが、木を登るラーナを見上げ、
「近くに生えているかしら…、薬草」
つぶやいた。
僕は周りをゆっくりと見回し、
「シイさん達の村の辺りは、土の質が良くて、
たくさん植物が…、茂っています。
もしかしたら、結構、近くの場所に…」
と、シイに言った。
シイがこちらを向き、
「そうだったら良いけど…」
小さく言葉をもらした。
そして、ゆっくりと顔を上げて、ラーナの方を見た。
僕もラーナが登っている木を見上げる。
ラーナは…、
1mの高さまで、登っていた。
ラーナ、
木を登るのが、かなり速い。
さすが林育ちだ。
よく木に登って遊び、
木登りの能力を高めているようだ。
ぐんぐんと登っていく。
枝のある2mの高さまで、
それほど時間をかけず、到達してしまった。
幹から、その枝の上へ危なげなく移動する。
そして、こちらを見下ろし、
「ここから、薬草が生えていないか、見てみます」
と、僕とシイに言って、周囲を見回し始めた。
村の内側である、こちらの方向をしばらく眺めてから、
村と外との境界のある、左と右の方向を見渡す。
そして、
背を向け、村の外側の方向を見た。
その状態のまま、動きを止める。
大分、周りを確認してくれたが…、
薬草は生えていたのだろうか。
様子からすると…、
見つかっていないように思える。
残念だが…、この近辺には、薬草は…。
僕がそう思った時、
「や、薬草がありました」
ラーナが振り返って、こちらを見下ろし、薬草の発見を伝えた。