ゲンの話を聞いて、シイが、あっと、声をもらす。
「そう言えば、昨日、
村のバッタ達の姿を、あまり見かけませんでした。
みんなケガをして…、薬草を食べに行っていたんですね。
一昨日の夜の風は…、
凄かったです。
私も、木の根元のくぼみで寝ていなかったら、
飛ばされていました」
シイがブルブルと体を震わせた。
ゲンが遠くを見つめ話し出す。
「夕方ぐらいの時は、風は、それ程なかったんだが、
寝て、しばらくして、段々と強くなってきた。
振り落とされそうだと思って、寝る場所を、
草の上から背の高いコケの間に変えたんだが…、
その移動が俺を救ったよ。
数時間後、
とんでもなく激しくなった風を、そのコケが防いでくれた。
だが…、
草の上で寝たままだった他のバッタ達は、
吹き飛ばされてしまっていた。
幸い、みんな無事だったが、
かなり体がボロボロに」
ゲンが悲しそうな表情になり、下を向いた。
シイが後ろを振り返って薬草を見つめ、
「それで薬草がこんなことに…」
小さく言葉をもらした。
ゲンが顔を上げ、薬草を眺める。
「でも、まぁ、葉の全部が消えてしまったわけではない。
残った葉で光合成出来るし、
この村の土の質は良いから、薬草はすぐに回復するよ。
…そういえば、
君達は、どうしてここに?
…!
もしかして、
薬草を…、
食べに来たのかい?
みんなにかじられて、
どうしようもなくヤバい状態になってしまっている、あの薬草を。
た…食べるなら、
少しぐらいだったら、
大丈夫だ…よ。
少しでも葉が残れば、
光合成、出来る…し」
言って、僕らを優しい目で見つめた。