なぜだ!
トッ。
僕は地面に着地してすぐ、
後ろを振り向いた。
ダダダ!
僕の目に、
柔軟に脚を動かして、
斜め前方向に横歩きし、
迫る、アカテガニの姿が映った。
なっ!
アカテガニが斜め前方向に、
横歩きをしている!
川岸で見たことがある、他のアカテガニは、
そこまで鋭く角度をつけて、横歩きが出来なかったのに!
「俺は長年、この堤防で、
横歩きの技術を磨いてきたのさ!」
アカテガニが言う。
くっ!
ここまで熟練したアカテガニだったか!
これでは斜めに跳んでも、追いつかれちゃうよ!
…驚いている場合ではない。
すぐ近くまで、迫られた!
早く回避しないと!
ダッ!
僕は慌てて左斜め前に跳んだ。
少し前のめりになって、宙を舞う。
斜め横歩き、ヤバいよ。
でも、階段まで後少し。
なんとか、逃げ切りたいが…。
ダダダ!
アカテガニが動きを止めず、素早く、斜め横歩きで僕の後を追っている。
距離が容赦なく縮まっていくよ!
トッ。
体が地面に着地する。
アカテガニは、
すでに僕のすぐ後ろだ!
ジャンプを急げ、僕!
ダッ!
僕は勢いよく、前に跳んだ。
「逃がすか、ショウリョウバッタ!」
すぐ後ろで、
アカテガニが叫ぶ。
ブゥン!
跳んで伸ばされた僕の右の後ろ脚に、
バァン!
衝撃が起こる。
アカテガニの右のハサミが、
僕の脚を叩いたのだ!
うわぁぁぁ!
その力の勢いで、
体が左に、大きく弾き飛ばされた!