前方に…何かがいる。
ここより2mほど先のところだ。
ヤ、ヤバいよ。
このままだとラーナとシイが、その何かに遭遇してしまう。
ラーナは1mほど先、シイは50cmほど先を跳んでいるのだ。
おとなしい種族だったら良いが、もし凶暴な種族だったら…。
は、早く危険を伝えないと。
「ラーナさん、シイさん、気を付けて下さい!
すぐ先に何かがいるようです!」
僕は大声で、前を行く2匹に伝えた。
その僕の声に、跳んでいたシイの体がびくりと震える。
着地した後、振り返り、
「セ…、セイさん?」
戸惑いの声をもらした。
よし、シイが止まってくれた。
ラーナは―
タッ、タッ、タッ。
そんな…、止まっていない。
飛び跳ね続けているよ!
距離があったため、ラーナの触角に、僕の声が届かなかったのだ。
早く止めないと、ラーナが!
タッ!
僕は勢いよく跳んで、ラーナを追いかけ、
「ラーナさん!
止まって下さい、ラーナさん!」
必死に声をかけた。
その僕の声に、
「えっ?
セイさん?」
跳んでいるラーナが反応した。
よし、気付いてもらえた。
これでラーナに止まってもらえる。
僕がそう思って、ほっとした時、
「きゃあ!」
着地したラーナが悲鳴を上げ、前に転んだ。
…!
ラ、ラーナ!
これは…、一体…。
草がたくさん茂っていて、着地した地面が見えなかった。
着地地点の状態が良くなかったのだろうか。
枝や石などがあって…。
僕は急いで先の見える位置まで進み、ラーナが着地した辺りを見つめた。
草の間から、体を起こしているラーナの姿と、
痛そうに悶える、別の生き物の姿があった。
なっ!
あ…、あの生き物は!
何度か故郷の草地の近くで、見たことがあるよ!
ク、クロヤマアリ…だ。
「つ…!
いてえよ、ハラヒシバッタ!
俺の背中を踏みやがって。
アゴでかむぞ、コラァ!」