アカテガニの言葉に僕はたじろぎ、
「くっ。
凄い高まりだよ…」
と、弱々しく声をもらした。
ここまで高まった相手を突破し、
階段に行くなんて…、かなり困難に思えるよ。
だが、
階段まで、それほど距離は離れていない。
数回跳べば、辿り着けるような距離だ。
全力で跳んで、アカテガニから離れ、
全力で一気に階段に向かえば、不可能ではないかもしれない。
「行くぞ!」
ダダダ!
アカテガニが斜め前歩きで、僕に向かって動き出した。
よ…し。
思い切り跳ぶぞ。
俊敏に動かれても、追いつけないほど遠くに!
僕はぐるっと、45度ほど右に回転し、
後ろ脚に力を込めて、
ダッ!
跳んだ。
ビュゥ!
良い感じに跳べた。
大分、遠くまで行けそうな勢いだ。
アカテガニがすぐには追いつけない位置まで、跳べたら良いが。
ザッ、ダダダ!
アカテガニが方向転換した。
脚をすべらせて減速、
すぐに横歩きに切りかえ、こちらへ向かってくる。
ぐんぐん加速していく。
どんどん距離が縮まっていく。
ヤバい、着地する前に追いつかれそうな勢いだよ。
…いや、
少しだけ、こちらが着地するのが早そうだ。
これなら、もしかしたら!
トッ。
着地した。
アカテガニとの距離は、ごくわずか―
急いで跳ぶんだ、僕よ!
素早く体を左へ90度回転させ、
階段のある方へ向き、
ぐっと、後ろ脚に力を込めた。
「行かせるか!
食らえよ、ショウリョウバッタ!」
跳ぼうとしている僕に、アカテガニが横歩きで近付きながら叫ぶ。
ブクブクブク。
視界の端で、アカテガニの口から、勢いよく泡が吹き出すのが見えた。