左右のハサミによる、2連撃!
ビュ、ビュゥ!
後ろから、それによって生み出された風が僕に当たる。
強烈な風だ。
攻撃を避けられて良かった。
前に倒れそうになりながら、
ザッ!
地面に着地する。
すぐに後ろを振り返り、アカテガニの方を見た。
振り下ろした左右のハサミを、胸元に戻しているところだった。
く…、
ヤバすぎるよ、アカテガニ。
明らかに戦闘能力が高まっている。
階段の方に近付くつもりだったのに、
翻弄され、
逆に遠くなってしまった。
なぜ僕は、ここまで翻弄されたのだ。
「感じただろう、ショウリョウバッタ。
俺の力の高まりを」
アカテガニが言った。
「感じたよ。
なぜ、ここまで…」
僕は、つぶやいた。
「教えてやろう。
なぜ俺が高まったのかを。
前歩き、後ろ歩きが出来るようになったことで、
俺は全方向を掌握した。
横、斜め、前後…、
360度に、
体の向きを変えずに、動くことが可能になったのさ。
それにより、方向転換時に発生するタイムロスの低減が実現した。
無駄のない敏捷な動きが出来るようになったというわけさ。
また、
前歩きで、相手を自分の正面に置いて動くことで、
両目の、広い視界で、相手の動きを捉えることが可能になった。
相手の動きに対し、反応がしやすくなったのだ。
そして、
そのように正面に捉えて接近することで、
左右のハサミによる同時攻撃が放ちやすくなった。
片方だけの時よりも、高威力で、広範囲な攻撃がね!
どうだ、ショウリョウバッタ!
俺の高まりは!」