気を付けて跳ばなければいけない。
着地した場所がクロヤマアリに近すぎたら、構える前に…、
遠すぎたら加速を許して懐に入り込まれ、攻撃を食らいそうだ。
蹴る力と方向、そしてタイミングを考えて跳ぶ必要がある。
ガサ、ガサ、ガサ!
クロヤマアリがすぐ近くまで来た!
蹴る力と方向…、
そしてタイミングは…、
これくらいで良いはずだ!
僕は素早く右斜め前方向に体を向け、
タッ!
跳んだ。
素早く低い軌道で飛んでいき、
ガサ!
草を揺らして着地した。
僕が跳んだのを見て、
ザッ!
クロヤマアリが脚をすべらして動きを止め、こちらに振り返った。
僕も慌てて体を左に向け、クロヤマアリの方を見る。
僕が着地したのは…、
クロヤマアリから十数cm離れた所だ。
近すぎず、遠すぎない位置に思える。
よ…し、
うまく右斜め前方向に跳べたようだ。
「おとなしくしてろや、ショウリョウバッタ!」
クロヤマアリが怒鳴って、再び僕に向かって歩き出した。
どんどん加速していく。
かなり速くなっていくよ!
でも、脚を止めることが出来たため、
そして、距離が短いため、
先程よりも速度が出ていない。
僕の目はなんとか…クロヤマアリの動きを追えている!
「食らえやぁぁぁ!」
クロヤマアリのアゴが僕に向かってきた!
「させるか、クロヤマアリ!」
僕は叫んで右の前脚を顔の高さまで持ち上げた。
そして、
ブン!
振り下ろした。
前脚の先が弧を描き、
バァン!
クロヤマアリの頭に直撃した。