僕の後ろ脚の蹴りに、
「ぐっ…!」
クロヤマアリがうめき、地面に伏した。
その攻撃の反動で僕の体が右斜め前に跳ねる。
前のめりになりながら、少し先の地面に着地した。
着地してすぐ、クロヤマアリとの距離をとるため、
タッ!
前に強く飛び跳ねる。
ク…クロヤマアリにジャンプ蹴りを当てることが出来た。
タイミングよく跳べ、うまく背中を蹴れたように思える。
全体重を加えることが出来た蹴りであり、
大きなダメージを与えられたかもしれない。
これでクロヤマアリが引いてくれたら良いが…。
ガサッと草を揺らし、地面に着地した。
後ろを振り返り、クロヤマアリを見る。
低い姿勢で痛そうに顔をゆがませ、鋭い目で僕をにらんでいた。
す…凄い形相だ。
け、気圧される…。
僕は数歩、後ずさりした。
もしまだクロヤマアリが、戦闘可能であったらヤバく感じる…。
今まで以上の勢いで迫ってきそうな雰囲気を放っているのだ。
そんな勢いで接近されたら、動きを捉えられず、
攻撃を食らってしまいそうに思える。
クロヤマアリ…、どう行動するだろうか。
3度の攻撃で、それなりにダメージを与えられたはずなので…、
闘いを止めてくれる可能性もゼロではないように思える。
だが、ショウリョウバッタとしておとなしく生きてきた、
戦闘に不慣れな僕が仕掛けた攻撃なのだ。
ダメージが深くなく、再び、こちらに攻撃に動くということも…。
クロヤマアリが…体を起こした。
「ぐっ…、出来るな、ショウリョウバッタ。
俺に3度も攻撃を加えるとは…。
特に最後の後ろ脚によるジャンプ蹴り…、
かなり効いた。
これ以上闘うのが…困難なくらいに…。
くっ…、
お腹が空いてきたことだし、
このくらいで勘弁しといてやるよ。
ありがたく思えよ、ショウリョウバッタ!
…やい、ハラヒシバッタ!
今度、俺を踏んだらただじゃおかねえぞ!
よく注意して飛び跳ねやがれ!」
ラーナがビクッと体を震わせ、ぎこちなくうなずいた。
それを見てクロヤマアリがうなずき、
右側のタンポポとスミレの花が咲いている茂みに体を向け、
ヨロヨロと歩き出した。