僕の中脚の攻撃に、
「つぅ…!」
クロヤマアリがうめいて右前脚で顔を押さえ、数歩後退した。
それを見て僕も後退して距離をとり、クロヤマアリの方に向き直った。
ク…クロヤマアリに中脚による一撃を当てることが出来た。
勢いよく…蹴り下ろせた。
多少なりともダメージを与えられたように思える。
2度目の攻撃なので、大きなダメージになったかもしれない。
これでクロヤマアリが攻撃を止めてくれたら良いが…。
ダン!
クロヤマアリが右前脚で地面を叩いて僕をにらんだ。
「コ、コノヤロォ!
1度ならず2度も俺に蹴りを食らわせやがってぇ!
もう許さんぞ、コラァ!
死角から猛攻してやるぞ、ショウリョウバッタ!」
凄い剣幕で怒鳴って、弾かれたように右方向に歩き出した。
鋭く右回りに旋回していき…、僕の後ろに回り込んだ!
くっ、後ろから攻める気か!
ヤバいよ、動きが見えないのだ。
このままでは攻撃を食らってしまう!
急いで後ろを向かないと!
僕は慌てて体を後ろに向けた。
僕の正面にクロヤマアリが…、
いない!
い、一体、どこに…。
ガサッ、ガサッ、ガサッ!
後ろから草のこすれる音が近付いてくる!
クロヤマアリ…、僕の動きを見て、さらに旋回して後ろに回ったか!
正面で動きを捉えたいが、もう大分近付かれてしまっている。
今、後ろを向いても間に合わない!
ど、どうすれば…。
一か八か、アカテガニとの闘いの時のように、
ジャンプ蹴りを試みる…か。
動きが見えないので難しいが、
触角を研ぎ澄まし、クロヤマアリの接近を感じれば、
不可能ではないはず。
僕の全体重が加わった蹴りであり、
成功出来れば、クロヤマアリに大きなダメージを与えられる。
闘いを終わらせることが出来るかもしれない!
よ…し、ジャンプ蹴りを仕掛けるぞ!
成功させるには、飛び跳ねるタイミングが重要だ。
触角を研ぎ澄ますんだ、僕よ。
ピィィィン。
ガサッ…ガサッ…ガサッ…ガサガサ!
クロヤマアリが僕に大分接近した!
飛び跳ねるのは…今だ!
僕は後ろ脚に力を込め、
ダッ!
跳んだ。
垂直方向に体が上がっていき、
頂点に達して落下を始める。
後ろ脚を構え、下を見る。
クロヤマアリが驚いた顔でこちらを見上げ、動きを止めていた。
クロヤマアリがいる位置は着地予定地点の後ろ側―
蹴りを…当てれそうな位置だ!
届け、後ろ脚よ!
シュッ!
僕は勢いよく後ろ脚を下に突き出した。
後ろ脚の裏がクロヤマアリの背中に伸びていき―
バァン!
直撃した。