シイが横からそっとラーナを抱いた。
そして、うるんだ目で僕を見た。
「セイさん。
クロヤマアリさんからラーナを守ってくれて、ありがとう。
クロヤマアリの方には荒くれ者が多いと知っていたので、
どうなるかと震えて見ていたのですが…、
本当、セイさんが強いバッタで良かったです」
僕は照れて右前脚で頭をかく。
「い…いや、運が良かった感じだよ。
僕は今までおとなしく生きてきた、戦闘経験を多くしていないバッタで…。
思い切って脚を伸ばしたら、うまく相手に当たってくれた。
それに…僕の方が体が大きく、リーチが長いから、有利だったんだと思う。
と…とにかく、クロヤマアリさんに引いてもらえて良かった。
行こう、薬草の生えている場所へ」
シイとラーナがうなずいた。
シイがラーナから離れ、茂みの奥に顔を向ける。
「そうですね。
急いで薬草の生えている場所に行かないと。
ゆっくりしていたら第2、第3のクロヤマアリさんに遭遇してしまいそうです。
ラーナ、薬草の場所へ案内をお願い」
「え、ええ。
2匹ともついてきて下さい」
ラーナがくるりと後ろを向いて、
タッ!
飛び跳ねた。
ラーナが跳んですぐ、
タッ!
シイが跳ぶ。
2匹の後を追って、
タッ!
僕も跳んだ。
村を出発してから、それなりの距離を飛び跳ねている。
村から薬草まで10m程ということなので、到着まで後少しに思えるが…。
タッ、タッ、タッ!
タッ、タッ、タッ!
タッ、タッ、タッ!
しばらく跳んだ後、ラーナが止まってこちらを振り返った。
そして、
「薬草が…ありました!」
薬草の近くに着いたことを伝えた。