クロヤマアリが茂みに入って、近くのタンポポによじ登り、
花の中心で体を休め、蜜を吸い始めた。
それを見て緊張が解け、僕はその場にへたり込んだ。
「セイさん!」
ラーナが僕に駆け寄ってきた。
ガサッ!
「だ、大丈夫ですか?」
遠くの茂みに隠れていたシイも跳び出てきた。
2匹がそばに来て、僕を心配そうに見る。
僕は顔を上げ、
「だ…大丈夫。
なんとか、攻撃を受けずに済んだ…よ。
精一杯の力で攻撃したから、脚の裏がヒリヒリするけど、
普通に動けそうだ。
ただ、闘いが終わって、ほっとして、
体の力が抜けてしまって…」
つぶやき、力なく微笑んだ。
ラーナが僕に一歩近付く。
そして、深く頭を下げた。
「ごめんなさい、セイさん!
私のせいで危険な目に遭わせてしまって。
私がクロヤマアリさんの背中を踏まなければ…、
いえ、そもそも薬草の所に行きたいと言わなければ、
こんなことにはなりませんでした。
本当にすいませんでした!」
ラーナが目に涙をため、僕に謝った。
僕は慌てて首を横に振った。
「ラ、ラーナさんが悪くないよ。
薬草までの距離は、ほんの10m程だったのに、
その移動の間に、体の小さい者同士が接触してしまうなんて、
かなり運が悪いよ。
ラーナさんは僕の前脚のケガのことを思って、
薬草を食べに行こうと言ってくれた。
僕は村の外に薬草を食べに行くことに消極的に振る舞っていたけど、
行こうと言ってくれた時、本心では嬉しかった。
本当は薬草を食べたいと思っていたから…。
ラーナさんを責めることは、僕には出来ないよ」
真剣な顔つきでラーナに言った。
ラーナが顔を上げた。
そして右前脚で目の下の涙をふき、
「ありがとう…、セイさん」
僕に言った。