アカテガニが…、
引いてくれた。
僕はアカテガニが消えた水面をしばし見つめた後、
ホッと胸をなでおろす。
強力なアカテガニだった。
よく逃げ切れたという感じだ。
蹴りがちゃんと当たってくれて良かったよ。
では…、
早く堤防の外に出よう。
あのアカテガニは引いてくれたが、
第2、第3のアカテガニが襲ってこないとも限らない。
僕はくるっと後ろを向いて、
階段を跳んで上がり始めた。
タッ、タッ、タッ…。
30秒程で、
堤防の一番上に到着する。
体を川の上流の方に向け、先を眺めた。
もう少し進んだら堤防の端…。
その先には林があるようだ。
あの林では、どんなことが待ち受けているのだろうか。
この堤防でアカテガニに遭遇したような、
ヤバいことが待ち受けていそうに思える。
何が待っているか分からないが、
故郷の草地に戻るために、
勇気を持って、あの林に踏み入るぞ!
僕はそう自分を奮い立たせて、林へと歩き出した。