ビュン!
僕の体が空中を、放物線を描いて飛んでいく。
ザッ!
それを見て、アカテガニが動きを止めた。
「俺を跳び越えて逃げるつもりだったか、ショウリョウバッタ。
でも、そのジャンプでは弱すぎる。
言っただろう。
俺は高速に後退も出来るのだ!」
言ってすぐ、
ダダダ!
頭上高くを舞っていた僕を、後ろ歩きで追い始めた。
後ろ向きに動いているのに、動きに無駄がなくスピーディーだ。
思った通り、
着地地点には余裕で先回りしてくる。
アカテガニの言うように、跳び越して逃げるつもりだったら危なかった。
いや、攻撃に失敗しても同じだ。
強力なハサミ攻撃が持っている。
それを食らわないよう、
狙いを研ぎ澄まし、
効果的な攻撃を…当てる!
僕は後ろ脚を引っ込め、
力を注ぎ始めた。
宙を舞っていた体が、
地球の重力に引っ張られ、
ガクッと地面に向かって、下降を始める。
ビュゥゥゥ!
落下地点には左右のハサミを持ち上げたアカテガニの姿があった。
僕の脚よ、
タイミングが間違わず、
狙いがそれず、
力が低くならず、
アカテガニに、
当たってくれ!
狙うのは、アカテガニの体ではない。
それでは攻撃を当てる前に、ハサミ攻撃を食らってしまう可能性が高い。
熟練したアカテガニなのだ。
瞬間的なハサミさばきは、かなり上手に思える。
狙うのは体ではない。
狙うのは…!