僕は草をかき分け、進んでいく。
危険生物に見つからないよう、音が出ないようにしたいが、
ガサ、ガサ。
この草の量だ。
体にたくさん草が引っかかり、どうしても音が周囲に響いてしまうよ。
存在を気付かれて危険生物がやって来たら、どうすれば良いだろうか。
僕は周りを見て歩きながら考える。
ここは…、
大きな木がたくさん生えている。
何かが近付いてきたら、木の裏に隠れよう。
追っかけてきたら、木に登って逃げることも出来そうだ。
しかし…、
動きの速い相手だったら、どうしよう。
木に辿り着く前に追いつかれてしまいそうだ。
堤防で遭遇したアカテガニはかなり速かった。
林の中にも、そのように俊敏に動ける生き物がわんさかいそうに思える。
早く接近に気付いて、難を逃れるようにしたいよ。
僕は2本の触角をピンと立て、より周囲への注意力を高めた。
…特別、何かが迫ってきている感じはない…か。
僕がそう思った時、
「誰か…、助けて下さい!」
触角に誰かの助けを求める声が届いた。