「では、ショウリョウバッタさん…、
ええ…と、名前は…」
「セイです」
「セイ君。
俺の後についてきてくれ」
ゲンは言い、歩き出した。
その後をラーナとシイがついていく。
僕はその3匹に続いて歩いた。
少し移動してから、ゲンが立ち止まる。
背の高い草の前だ。
ゲンがその草に跳んで抱きつき、
「この辺りならば、落ち着いて休めるだろう。
村の中心付近で、外との距離がある。
それに、おいしい草もたくさん茂っている」
僕に言った。
僕も草に抱きつき、
「ありがとうございます。
気持ちよく休めれそうです」
ゲンに感謝を伝えた。
「それは良かった。
君さえ良ければ、いくらでも滞在してもらって構わない。
ラーナを助けてくれたのだ。
村の者は、皆、歓迎だ。
それに…」
ゲンがうつむいて押し黙った。
「村長…?」
突然黙ったゲンを見て、ラーナが首を傾げる。
ゲンが顔を上げ、
「セイ君。
君は上流にある、住んでいた草地に戻る途中だそうだが…、
その草地は、ここから近いのかい?」
僕に聞いた。
「いえ…、遠いです。
この辺りからでは、よく見えません」
僕はゲンに答えた。
「なら…、あきらめた方が良い。
君の故郷の草地に戻ることを。
あまりに危険すぎる。
その道中、どんな危険生物に遭遇するか。
距離がある分、とんでもなく凶暴な危険生物に出会うリスクが著しく高い。
この林にも、多くの種族がいる。
この林でさえ、抜け出せるか。
セイ君。
君はせっかく、安全なこの村に辿り着けたのだ。
わざわざ危険を冒して、行く必要があるのだろうか。
行かず、ずっとこの村にとどまった方が良い」