ハラヒシバッタ。
小柄なバッタだ。
視界の先にいるハラヒシバッタは体長5mm程。
僕は3cm程なので、大分、体格差がある。
僕が暮らしていた草地にも、彼らはたくさん住んでいた。
おとなしくて温厚な種族だ。
一体、どうしたのだろうか。
周りを見ると、ハラヒシバッタが他にもたくさんいる。
地面に落ちている木の枝の周囲に集まっているようだ。
僕は、
ガサ。
茂みから出て、
「ハラヒシバッタさん。
何かあったのですか?」
と、目の前の女の子のハラヒシバッタに聞いた。
彼女は僕を見て、
驚いた表情になり、
「あっ!
ショウリョウバッタさん!
そ、そうなんです。
大変なことになってしまって…。
私の友達が倒れた枝の下敷きになってしまったんです。
幸いけがは無いようなのですが、
枝の下に多くの草が横倒しになっていて、
それが邪魔して助けることが出来ないんです!」
と、言った。
「えっ!
そんな!」
僕は驚きの声をもらし、先にある枝を見た。
昨夜は、風が大分強かった…。
だから、多くの草が横倒しになったのだ。
そして、運悪く、その上に強風で折れた枝が落ちてしまった…。
「おい、そこのショウリョウバッタ!
手伝ってくれないだろうか!
体の小さい俺達の力だけでは、この草をどけられないんだ!」
枝の近くにいるオスのハラヒシバッタが僕に言った。
「わ、分かりました」
僕はうなずき、枝へと向かった。