僕は枝の近くに到着する。
「ここだ。
この草の下に、俺達の村の女の子が…」
ハラヒシバッタのオスが目の前の草を前脚で指して言った。
僕はその前に歩み寄る。
「え~ん!」
横倒しになっている草の下から、女の子の泣き声が聞こえた。
早く助けないと。
「脚で草を引きちぎれるか、試してみます」
僕は草を前脚でつかみ、引っ張る。
ぐぅぅぅ!
うぉぉぉ!
…だ、駄目だよ。
頑丈な草だ。
びくともしない。
この草は、全く枯れていない、新鮮な草だ。
芯までしっかりしている。
「ショウリョウバッタさんでも、難しいのか…。
一体、どうすれば良いんだ」
ハラヒシバッタのオスが、弱々しく声をもらす。
なんとか…助けたいよ。
もう一度、勢いをつけて引っ張ってみるぞ!
ぐぅぅぅ!
うぉぉぉぉぉ!
その僕の引っ張る力で、
ギシ…。
と、草からきしむ音がもれる。
いける…か。
もう少し力を高めて、引っ張る…ぞ。
ぐぅぅぅ!
うぉぉぉ!
う、おお…お。
こんなに強く…引っ張っているのに、
ちぎれて…くれない…よ。
うわっ!
つかむ力が弱くなって草から前脚が外れ、後ろへと僕は倒れた。
ぐっ。
僕は起き上がって、草をにらむ。
強く引っ張ったのに、キズ1つついていないよ。
僕の力では…、
助け出すことが出来ない…のか。
何か、方法はないのか。
引っ張る以外に方法は。
僕がそう苦悩した時だ。
ぐぅぅぅ。
僕のお腹が鳴った。
い、いけないよ。
こんな時に。
ハラヒシバッタのみんなが困っている時なのだ。
ゆっくり食事している場合ではないよ。
いや…、待てよ。
その手が…、あった。
引っ張る以外に、草をどうにかする方法が見つかったぞ!
僕は思い立つや否や、草に走り寄ると、
顔を近付け、
食べ始めた。
ガジガジ。
ムシャムシャ。