でも…、
本当にそれで良いのだろうか。
この村に永住したら、
もう故郷の草地のバッタ達に出会えなくなってしまうのだ。
色々と僕に教えてくれた、トノサマバッタのデーンや、
よく跳ねあって遊んだ、ショウリョウバッタのレイちゃんや、イナゴのイナコちゃんに。
優しかった、みんなに。
草地に戻るために、上流へ…進みたいよ。
でも、そうしたら、
ゲンの言った通り、途中で力尽きる恐れがある。
勇気を持って、行くか。
それとも、この村で世話になるか…。
僕は…、
どうすれば良いんだ!
僕は左右両方の前脚で頭を抱えた。
葉をつかんでいた前脚を離したことで、
バランスを崩し、体が草の上から落下した。
うわっ!
ザッ。
背中から地面にぶつかる。
「セ、セイさん。
大丈夫ですか?」
仰向けになった僕に右から声がかかる。
ラーナだ。
その隣で、シイが心配そうな表情で僕を見ていた。
僕はくるっと起き上がり、
「大丈夫です。
地面にやわらかいコケがたくさん生えていたので、痛くありませんでした。
食事を邪魔してしまい、すいません」
2匹に言った。