僕の言葉に、ラーナがブンブンと首を横に振る。
「いえ、食べ終わったところでしたので。
それより、セイさん、
さっきは本当に、ありがとうございます。
見ず知らずの私を、
草の下から助けてくれて…」
感謝の言葉を僕に伝えた。
僕は、はにかみ、
「いえ、困った時はお互い様です。
バッタの種族同士なんですから。
ハラヒシバッタさんは僕の故郷の草地にも住んでいて、
良くしてもらっています」
言葉を返す。
ラーナが少し驚いた表情になり、口を開く。
「そうですか、ハラヒシバッタがあなたの草地にも。
セイさんと仲良くしてくれた、
そのハラヒシバッタの方にも感謝したいです。
セイさんのいた草地には、良いバッタが多そうですね」
僕はうなずき、
「ええ。
ショウリョウバッタや、イナゴ、トノサマバッタ…。
色んな種族の、良いバッタ達が暮らしています」
朗らかに答えた。
「良い草地のようです。
やはりセイさんは、戻るつもりなのですか、その草地に…」
ラーナが少し寂しそうな表情になり僕に聞く。
「どうすれば良いか、迷っています。
ゲンさんの言った通り、危険な道なので…」
僕は顔を曇らせて答えた。
シイが一歩前に出て、
「無理しないで下さい、セイさん。
とんでもなく凶暴な危険生物が、外にはたくさんいるんです。
遠慮せず、この村に住んで下さい。
セイさんは、ラーナを助けてくれました。
その時見せてくれた、草をかじるアゴの力、心強いと感じます。
村の者、みんな、セイさんが残ってくれたら嬉しいと思います。
どうしても行きたいというのなら、
せめてキズが完璧に癒えるまで、村にとどまって下さい。
草を引っ張ってもらった時に、前脚をケガされているのですから…」
僕を心配そうに見て、言った。
ラーナが驚いた表情になり、
「セイさんがケガを…?」
声をもらした。
僕は慌てて首を横に振り、
「いえ、軽く擦っただけです。
少しヒリヒリするだけで、大したケガではありません。
ちょっと無理に草を引っ張りすぎてしまって。
数日で治ると思います。
お言葉に甘えて、治るまでゆっくりさせてもらいます」
少し擦ってしまった前脚を2匹にヒラヒラと見せながら言った。