夕食をとり始めた2匹を見て、
僕もそばに生えていた草に近付き、食べ始めた。
昨日の夜に食べた草よりも、さらにみずみずしくて口当たりが良い。
ここは川岸のすぐ近くなので、周囲の土に、
より豊富に水分が含まれているのだろう。
幸せな心地でかじりながら、
先程シイとラーナが僕に伝えてくれた言葉を思い出す。
村に歓迎してくれて、本当にありがたい限りだ。
昨日、この村に辿り着いた時には故郷の草地に戻ろうと思っていたけど、
今ではとどまりたい気持ちでいっぱいだよ。
でもシイとラーナが最後に言ってくれたように、
定住したら故郷と別れることになるのだ。
ちゃんと自分のバッタライフをどうするのか考える必要がある。
…とは思ったものの、木登りをして遊べるのは、かなり魅力的だ。
新鮮な木の葉やコケ、落ち葉など、おいしい食べ物も豊富にある。
もう、この村に定住する方向で検討していこうか…。
草をかじり終え、しばらく考え込んでいると、
「大分、暗くなりましたね。
もうそろそろ眠る時間です。
また明日、会いましょう、セイさん」
シイがこちらに顔を向けて言って、前脚を振った。
「ではセイさん、また明日」
ラーナも前脚を振る。
僕が前脚を振ると、2匹が背を向けて跳び、
その先に茂っていたコケの中へと姿を消した。
シイの言った通り、辺りが大分暗くなっている。
僕も眠るとしよう。
今後どうするかは明日の朝、じっくりと考えよう。
僕は少し先に生えていた背の高い草の根元に抱きつき、
葉に顔をうずめた。