僕は2匹の言葉に感激して目に涙をためた。
「突然村にやって来た、
違う種族のバッタである僕をそこまで歓迎してくれるなんて…、
本当にありがたいよ。
この村にとどまりたい気持ちが止めどなく高まっていくよ」
シイが優しく微笑む。
「セイさんが村に残ってくれたら何よりですよ。
―そういえば…、
大分、日が落ちてきましたね」
シイが僕の左斜め後方を眺めて言った。
言われてみると辺りが薄暗くなってきている。
振り返って彼女の視線の先を見渡すと、山の後ろに太陽が隠れかかっていた。
もうじき夜になるのだ。
そう思った時、
ぐぅ…。
僕のお腹が鳴いた。
「村の外で薬草を食べてから時間が経って、
大分お腹が空腹になってきたよ…」
僕は弱々しくつぶやいた。
「そうですね。
そろそろ夕食の時間です。
これから食事にしましょう。
―セイさん。
私達としてはセイさんにこの村にとどまって欲しいと思っています。
ですが、そうするとセイさんは故郷に戻れなくなる…。
それを考えると、とても無理強いすることは出来ません。
どうか決断を焦らず、ゆっくり考えて欲しい」
シイが真摯な表情で僕を見つめ言った。
ラーナが続けて口を開く。
「せっかく仲良くなれたので、ずっとこの村にいて欲しいです。
だけどシイの言う通り…。
セイさんのバッタライフですから、セイさんの悔いのない道を歩いて欲しい…」
2匹は僕に背を向け、思い思いの方に飛び跳ねた。
そして着地した後、
自分達の近くに落ちていた枯れ葉を食べ始めた。