ラーナがブンブンと首を横に振った。
「いえ、あの時、セイさんは私より1m以上も後ろにいたんです。
そんな遠くからクロヤマアリさんの存在を察知出来るなんて、
かなりの触角の良さですよ。
村に帰る時は、セイさんのその触角を当てにしたいです。
もう誰かの背中を踏んで怒りを買うようなことにはなりたくありません。
3匹で固まって飛び跳ねて行きましょう」
シイがうなずいた。
「良い考えよ、ラーナ。
3匹で触角を澄まして一緒に進んでいけば、
ぐっと危険を回避出来る可能性が高まるもの。
3匹のうち1匹でも接近に気付けば良いのだから」
僕もうなずいた。
「ベストな帰り方だ。
飛び跳ねながら進んでいくと、風を切る音や、草の擦れる音が邪魔して、
周囲の音が聞き取りにくい。
誰かの接近する音を聞き逃しそうで不安に感じる。
でも3匹で触角を澄まして進めば、
聞き逃す恐れをずっと少なくすることが出来て安心だ。
あと少し休んだら、3匹で固まって出発しよう」
「了解です」
「しっかり心と体の準備をしておきます」
ラーナとシイが若干、緊張した表情になって言った。