「なっ!」
「えっ、そんな!」
僕とラーナが慌てて止まり、シイの方を向いた。
「く…草が揺れたのは、ここから2mほどの地点です。
揺れたのは一瞬…。
風に吹かれて揺れただけで、私の気のせいかも…。
ど…どうしましょう?」
僕はシイが見ている方向に触角を澄ました。
………ガ…サ、ガ……サ。
かすかに草の擦れる音が聞こえた。
「き…気のせいじゃないよ。
誰かが歩いている気配がある…。
よ、よく気付いてくれたと感じる。
多少、距離はあるものの、
このまま進んでいたら見つかっていたかもしれないのだ。
気付かれず横を通れるよう、少し右に針路を変えたいけど…」
僕は右前方に触角を澄ました。
…特に、気配はないようだが…。
ラーナが触角をピンと立て、右前方を見つめた。
「ここに来るまでの間、特別、右から迫る気配は感じませんでした。
今も…大丈夫に思えます」
ラーナの言葉に僕はうなずいた。
「僕も大丈夫に感じる。
よ…し、針路を少しだけ右に変え、村に向かって飛び跳ねて行こう!」
「はい、そうしましょう!」
「了解です!」
シイとラーナがうなずいたのを見て、
タッ!
僕は右前方に飛び跳ねた。
タッ!
タッ!
僕の後を追って、すぐさまシイとラーナも飛び跳ねた。