こうやってゆっくり歩いていると、
本当に住みやすくて良い村だと感じる。
村の広さは大体10m四方ほどあるのだが、
その内側や外との境界に多くの木が生えている。
それらの木から葉がたくさん落ち、
ハラヒシバッタの好物である枯れ葉になるのだ。
それに川に面しているため、湿気が多く、コケも茂りやすい。
生えている草もみずみずしくておいしい。
食べ物の豊かな過ごしやすい村だ。
僕の住んでいた草地も川に面しているため草は茂りやすいのだが、
木は生えておらず木の葉にはありつけない。
木陰がないので湿気は多くなく、コケはここまで生えていなかった。
故郷の草地に戻らずに…この村で永住することを考えてしまうよ。
思って立ち止まり、村を見渡した。
その時、
「おや、君は…、
確か、セイ君だったかな?
昨日、村に来て、ラーナを枝の下から助けてくれた…」
後ろから声がかかった。
体を向けると、どこかで見覚えのある顔があった。
確か…昨日の夜に、
村の見回りをしていたオスのハラヒシバッタの一匹だ。