僕はバレックの跳び去った方を見つめ、立ちつくした。
バレックの言った通り、僕は今、岐路に立たされている…。
この村にとどまるか、それとも、村を出発して故郷の草地を目指すか…。
とどまったら安全だけど、故郷の仲間達に出会えなくなってしまう。
しかし、故郷の草地に戻ろうと出発したら、多くの危険に遭遇することになる。
これまでに遭遇した、フナやアカテガニ、クロヤマアリのような…。
いや…、彼ら以上の危険な種族に遭遇することもあるだろう。
故郷の仲間達には再び会いたい。
しかし、それをかなえようとした場合、多くの危険を乗り越えないといけない。
故郷の草地までかなりの距離があるため、とてつもなく困難であり、
乗り越えられず、途中で果てる可能性が随分とある…。
そうなるくらいなら行かず、とどまった方が良いだろう。
だが…、触角を研ぎ澄まし気を付けて進んで行けば、
故郷の草地に辿り着くことも不可能ではないかもしれないのだ。
行くか…、とどまるか…。
く…、
どうすれば良いか、分からないよ!
僕は前脚で頭を抱えた。
す…すぐには決断出来そうにない…。
とりあえず今は村の中を歩いて、頭の中を落ち着かせよう。
僕は前脚を地面に降ろし、川岸の方へと歩き出した。